翻訳に向いている人とそうでない人

翻訳が向いている人は、0からものを作り出すことが苦手でも、キットがあればササッと作れてしまうようなタイプだと思います。例えば、抽象画を描けと言われると自由度が高いのですが、これが逆に何を書いて良いかわからないという人がいます。既にある目の前のものを描く静物画の方が得意だという人は、既に原書があるものを別の言語に変換するだけという作業が向いているというわけです。既に完成形が見えているキットが好きだという人も同じですね。翻訳する原書の内容は変わりないのですから。
逆に、自分の意見を主張したいタイプは翻訳をしていてもしっくりこないかもしれません。作者が言っていることに反論したくなったりしても、そこに自分の意見を入れることはできないのですから。
伝わる翻訳ができる人は、原作者の言わんとしていることをそのままの状態で捉えることができる人でしょう。当たり前のことを言っているようですが、これがなかなか難しいと思います。どうしても訳す人によって違いは出てしまうものなので、使っている言語が同じであっても差は生まれます。そしてそのうちどれが良いかを決めるのは原作者ではないので、原作者が知らないところで誤解が生まれているかもしれないのです。そう思うと、翻訳家の責任は重大ですよね。英会話スクールの翻訳コースでは教えてくれない、センスの問題になりますから。
私がついついやってしまいがちなのが、難解な文章をかみ砕いて書いてしまうことです。そのまま書かなければいけないのに、自分がその文章を正確に把握しなければならないから、その過程でわかりやすい文章の方にいってしまうことがあります。そうした方がわかりやすいと思っても、それは原作者の書き方ではなく私の書き方が混じってしまっていますよね。そこまで正確さを求めない翻訳の仕事なら良いのですが、そうでないならきっと私はその仕事に向きません。もし翻訳の仕事があるなら、「意訳をふんだんに盛り込んでもらって結構です」というものを探す必要がありそうです。

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